重要ビジネスフレームワーク50選
ビジネスの現場で活用できる重要なフレームワークを50個、一覧にまとめました。事業戦略の立案、マーケティング、組織運営、問題解決など、様々なシーンで役立つ思考の「型」です。重要度は、汎用性や現代ビジネスにおけるインパクトを基準に、50個の中で相対的に評価しています。
I. 戦略分析・事業環境分析
企業の進むべき方向性や、取り巻く環境を分析するためのフレームワークです。
No. | フレームワーク名 | どんな時に使うか | どんな内容か要約 | 重要度 |
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1 | 3C分析 | 事業戦略やマーケティング戦略の立案時。自社の立ち位置を把握する。 | 顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの観点から市場環境を分析し、成功要因(KSF)を導き出す。 | ★★★★★ |
2 | SWOT分析 | 経営戦略の策定や事業計画の立案時。内外の環境要因を整理する。 | 自社の内部環境(強み:Strength, 弱み:Weakness)と外部環境(機会:Opportunity, 脅威:Threat)を分析する。 | ★★★★★ |
3 | PEST分析 | 中長期的な経営戦略を立てる際。マクロ環境の変化を捉える。 | 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの観点から、自社に影響を与える外部要因を分析する。 | ★★★★☆ |
4 | ファイブフォース分析 | 業界の収益構造や魅力度を分析する時。新規参入や競合戦略の判断に使う。 | 「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「既存競合との敵対」の5つの力から業界の競争環境を分析する。 | ★★★★☆ |
5 | VRIO分析 | 自社の競争優位性を評価する時。経営資源の強みを客観的に把握する。 | 自社の経営資源が持つ価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Imitability)、組織(Organization)の4つの観点から、持続的な競争優位性を評価する。 | ★★★★☆ |
6 | バリューチェーン分析 | 自社の事業活動における強み・弱みを把握し、付加価値向上を目指す時。 | 事業活動を「主活動」と「支援活動」に分類し、どの工程で付加価値が生まれているかを分析する。コスト削減や事業優位性の構築に繋げる。 | ★★★☆☆ |
7 | コア・コンピタンス | 自社の事業領域の選択と集中を考える時。 | 他社には真似できない、自社ならではの中核的な強みを定義する。これを軸に多角化や新規事業展開を検討する。 | ★★★☆☆ |
II. マーケティング・製品戦略
顧客に価値を届け、製品やサービスを成長させるためのフレームワークです。
No. | フレームワーク名 | どんな時に使うか | どんな内容か要約 | 重要度 |
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8 | 4P / 4C分析 | マーケティング戦略の具体的な実行計画を立てる時。 | 製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)の4P(企業視点)と、顧客価値(Customer Value)、顧客コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4C(顧客視点)で施策を検討する。 | ★★★★★ |
9 | STP分析 | ターゲット顧客を定め、自社の立ち位置を明確にするマーケティングの初期段階。 | 市場を細分化し(Segmentation)、狙うべき市場を定め(Targeting)、その市場における自社の独自のポジションを確立する(Positioning)。 | ★★★★☆ |
10 | AIDMA / AISAS | 顧客の購買行動プロセスを理解し、コミュニケーション施策を設計する時。 | AIDMA(注意→関心→欲求→記憶→行動)は伝統的なモデル。AISAS(注意→関心→検索→行動→共有)はインターネット時代の行動モデル。 | ★★★★☆ |
11 | プロダクトライフサイクル(PLC) | 製品の市場投入からの時間経過と売上の変化を予測し、各段階で適切な戦略を立てる時。 | 製品の市場寿命を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階に分け、それぞれの段階に応じたマーケティング戦略を立案する。 | ★★★☆☆ |
12 | アンゾフの成長マトリクス | 企業が成長するための戦略オプションを検討する時。 | 「市場浸透」「新製品開発」「新市場開拓」「多角化」の4つの成長戦略を、「製品」と「市場」をそれぞれ「既存」と「新規」の軸で分類して考える。 | ★★★★☆ |
13 | PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント) | 複数の事業や製品への経営資源の最適な配分を検討する時。 | 事業を「市場成長率」と「市場シェア」の2軸で「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」に分類し、投資の優先順位を判断する。 | ★★★☆☆ |
14 | ブルーオーシャン戦略 | 競争の激しい既存市場(レッドオーシャン)を避け、新たな市場を創造したい時。 | 競争のない未開拓の市場(ブルーオーシャン)を創造するための戦略。価値を高めつつコストを削減する「バリューイノベーション」を目指す。 | ★★★☆☆ |
15 | ジョブ理論(Jobs-to-be-Done) | 顧客が本当に求めていることを理解し、革新的な製品・サービスを開発したい時。 | 顧客は製品を買うのではなく、特定の「用事(ジョブ)」を片付けるために製品を「雇用」していると捉え、顧客の根本的な課題解決を目指す。 | ★★★★☆ |
16 | イノベーター理論 | 新製品やサービスが市場に普及していく過程を理解し、普及戦略を立てる時。 | 消費者を「革新者」「初期採用者」「前期追随者」「後期追随者」「遅滞者」の5タイプに分類し、市場への浸透プロセスを説明する理論。 | ★★★☆☆ |
17 | RFM分析 | 顧客分析を行い、優良顧客を特定してCRM(顧客関係管理)に活かす時。 | 顧客の購買行動を「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の3つの指標で分析し、顧客をランク付けする。 | ★★☆☆☆ |
III. 思考法・問題解決
ロジカルに考え、効果的に問題を解決するためのフレームワークです。
No. | フレームワーク名 | どんな時に使うか | どんな内容か要約 | 重要度 |
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18 | MECE(ミーシー) | 物事を整理・分析する際の基本的な考え方として常に意識する。 | 「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略。「モレなく、ダブりなく」物事を分類・整理するための思考法。 | ★★★★★ |
19 | ロジックツリー | 問題の原因究明や解決策の洗い出しを網羅的に行いたい時。 | 問題を構成要素に分解していき、樹形図(ツリー構造)で整理する。Whyツリー(原因追求)やHowツリー(解決策立案)がある。 | ★★★★★ |
20 | PDCAサイクル | 業務改善や目標達成を継続的に行いたい時。 | Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを回し続けることで、継続的な改善と目標達成を目指す。 | ★★★★★ |
21 | OODAループ | 状況変化が速い現場で、迅速な意思決定と行動が求められる時。 | Observe(観察)→Orient(状況判断)→Decide(意思決定)→Act(行動)のループを高速で回す。PDCAより即時性を重視。 | ★★★★☆ |
22 | 5W1H | 情報伝達や状況整理、課題設定を明確に行いたい時。 | Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)の6つの要素で情報を整理・伝達する。 | ★★★★★ |
23 | As is / To be | 現状(As is)と理想の姿(To be)を定義し、そのギャップを埋める課題を明確にする時。 | 業務改善や目標設定の初期段階で、目指すべきゴールと現状との差を明らかにし、取り組むべき課題を具体化する。 | ★★★★☆ |
24 | 仮説思考 | 限られた情報の中で、スピーディーに問題解決を進めたい時。 | 先に「仮の答え(仮説)」を立て、その仮説が正しいかを検証するために情報収集や分析を行う思考プロセス。 | ★★★★☆ |
25 | ゼロベース思考 | 既存の制約や常識にとらわれず、全く新しい発想を生み出したい時。 | 全てを白紙(ゼロ)の状態から考え、物事の本質や最適なあり方を追求する思考法。 | ★★★☆☆ |
26 | デザイン思考 | ユーザーの潜在的なニーズを発見し、革新的な解決策を創造する時。 | デザイナーの思考プロセスを応用し、「共感」「問題定義」「創造」「試作」「テスト」のプロセスを通じて、人間中心の問題解決を行う。 | ★★★★☆ |
27 | フェルミ推定 | 正確なデータがない状況で、論理的に概算値を導き出したい時。 | 既知の情報を基に仮説を立て、論理的に計算を組み立てることで、見当もつかないような数値を推定する思考法。 | ★★★☆☆ |
28 | プロコン分析 | ある意思決定をする際に、そのメリットとデメリットを比較検討したい時。 | 特定の選択肢について、賛成意見(Pros)と反対意見(Cons)を洗い出し、比較検討することで、より客観的な意思決定を促す。 | ★★★☆☆ |
29 | ECRS(改善の4原則) | 業務プロセスの効率化や改善案を検討する時。 | Eliminate(排除できないか)、Combine(結合できないか)、Rearrange(順序変更できないか)、Simplify(単純化できないか)の4つの視点で改善策を探す。 | ★★★☆☆ |
IV. 組織・人材マネジメント
強い組織を作り、人のパフォーマンスを最大化するためのフレームワークです。
No. | フレームワーク名 | どんな時に使うか | どんな内容か要約 | 重要度 |
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30 | OKR | 組織と個人の目標を連動させ、高い目標達成を目指す時。 | Objectives and Key Resultsの略。挑戦的な目標(Objectives)と、その達成度を測る具体的な成果指標(Key Results)を設定し、組織全体の方向性を一致させる。 | ★★★★☆ |
31 | KPI / KGI | 目標達成の進捗を定量的に管理したい時。 | KGI(重要目標達成指標)が最終目標、KPI(重要業績評価指標)がKGI達成のための中間指標。KPIを追いかけることでKGI達成を目指す。 | ★★★★★ |
32 | SMART | 個人やチームの目標を具体的で達成可能なものに設定する時。 | 目標設定の際に、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Related(関連性)、Time-bound(期限付き)の5つの要素を満たすべきとする考え方。 | ★★★★☆ |
33 | マズローの欲求5段階説 | 従業員のモチベーション要因を理解し、人事施策を考える時。 | 人間の欲求は「生理的」「安全」「社会的」「承認」「自己実現」の5段階のピラミッドで構成されており、低次の欲求が満たされると高次の欲求を求めるようになるという理論。 | ★★★☆☆ |
34 | マッキンゼーの7S | 組織全体の健全性や変革の方向性を多角的に分析する時。 | 組織を構成する7つの要素(戦略、組織構造、システム、スキル、人材、スタイル、共通の価値観)の相互関係を分析する。ハードの3Sとソフトの4Sからなる。 | ★★★☆☆ |
35 | Tuckmanモデル(タックマンモデル) | チームの形成から成果を出すまでの発達段階を理解し、適切な介入を行う時。 | チームは「形成期(Forming)」「混乱期(Storming)」「統一期(Norming)」「機能期(Performing)」という段階を経て成熟するというモデル。 | ★★★☆☆ |
36 | Will-Skillマトリクス | 部下の育成方針を、その意欲(Will)と能力(Skill)に応じて検討する時。 | 縦軸に意欲、横軸にスキルを取り、人材を4象限に分類して、それぞれに適した指導や権限委譲の方法を考える。 | ★★★☆☆ |
V. その他・複合的なフレームワーク
財務、新規事業、プロジェクト管理など、特定の目的に特化したフレームワークです。
No. | フレームワーク名 | どんな時に使うか | どんな内容か要約 | 重要度 |
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37 | リーンキャンバス | スタートアップや新規事業のビジネスモデルを素早く整理・検証する時。 | A4一枚のシートに「課題」「顧客セグメント」「独自の価値提案」「解決策」「チャネル」など9つの要素を書き出し、ビジネスモデルを可視化する。 | ★★★☆☆ |
38 | ビジネスモデルキャンバス | ビジネスモデルを構造的に理解・設計・共有したい時。 | 「顧客セグメント」「価値提案」「チャネル」「顧客との関係」「収益の流れ」「主要なリソース」「主要な活動」「主要なパートナー」「コスト構造」の9つの要素でビジネスモデルを俯瞰する。 | ★★★★☆ |
39 | AIDAS | 営業プロセスや顧客とのコミュニケーションを設計する時。 | Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Action(行動)、Satisfaction(満足)の5段階で顧客心理の変遷を捉える。 | ★★☆☆☆ |
40 | FABE分析 | 商品やサービスの魅力を顧客に効果的に伝えるためのプレゼンや営業トークを構築する時。 | Feature(特徴)、Advantage(利点)、Benefit(顧客便益)、Evidence(証拠)の4つの要素で、説得力のある説明を構成する。 | ★★☆☆☆ |
41 | AARRRモデル(アーモデル) | グロースハックにおいて、ユーザー行動を分析し、サービス改善の指標とする時。 | Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益)の5段階でユーザー行動をモデル化する。 | ★★★☆☆ |
42 | バリュープロポジションキャンバス | 顧客の課題と、自社製品が提供する価値が合致しているかを確認・設計する時。 | 「顧客の課題」と「企業の価値提案」の2つの要素を詳細に書き出し、両者のズレをなくすことで、本当に顧客に求められる製品・サービスを作る。 | ★★★★☆ |
43 | CRECサイクル | 顧客との良好な関係を築き、ファンになってもらうためのサイクルを考える時。 | Communication(情報発信)、Relation(関係構築)、Engagement(愛着)、Collaboration(協働)の4段階で顧客との関係性を深めていくモデル。 | ★★☆☆☆ |
44 | PMBOK(ピンボック) | 大規模なプロジェクトを体系的に管理する際の知識体系として参照する時。 | プロジェクトマネジメントの知識を「10の知識エリア」と「5つのプロセス群」で体系化したもの。プロジェクト管理の標準。 | ★★★☆☆ |
45 | WBS (Work Breakdown Structure) | プロジェクトの全体像を把握し、タスクを洗い出して管理したい時。 | プロジェクト全体の作業を、より小さな管理しやすい単位に分解していく手法。「作業分解構成図」とも呼ばれる。 | ★★★☆☆ |
46 | BSC(バランスト・スコアカード) | 財務指標だけでなく、多角的な視点から業績を評価・管理したい時。 | 企業や組織の業績を「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点から評価・管理する。 | ★★★☆☆ |
47 | ROIC(投下資本利益率) | 事業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを評価する時。 | 税引後営業利益を、事業に投下した資本(株主資本+有利子負債)で割って算出する。資本効率を重視する経営指標。 | ★★★☆☆ |
48 | MVV(ミッション・ビジョン・バリュー) | 企業の存在意義や目指す姿、行動指針を明確にし、組織に浸透させたい時。 | Mission(使命・存在意義)、Vision(目指す姿)、Value(行動指針・価値観)を言語化し、企業活動の根幹とする。 | ★★★★☆ |
49 | CSV(Creating Shared Value) | 社会課題の解決と企業の経済的利益を両立させる事業を構想する時。 | 「共通価値の創造」を意味し、社会課題を解決することによって経済的な価値も創造するというアプローチ。 | ★★★☆☆ |
50 | ガントチャート | プロジェクトのスケジュールや進捗状況を視覚的に管理したい時。 | 縦軸にタスク、横軸に時間をとり、各タスクの開始日と終了日を棒グラフで示す。プロジェクト全体の進捗管理に不可欠。 | ★★★★☆ |
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